１ドル札の裏にピラミッドの目のデザインがあるって正直不気味じゃないですか？「自由」と「法の下の平等」をあれだけ徹底するアメリカが一つの団体を贔屓するんですよ。何か深い理由があると思いませんか？？笑
最初にネタバレをするとあれってフリーメーソンとは無関係なんです。ワシントン大統領もフランクリンも憲法制定メンバー56人中53人もフリーメイソンでしたが、この時点でこのピラミッドの目というマークとフリーメイソンには直接的な関係性はなかったんです。(メイソンがマークを制定したのはそれ以後）
もともとピラミッドの目(プロビデンスの目と言います)はフリーメーソンのマークではなく、キリスト教における意匠です。神の全能の目を意味するもので、古くからヨーロッパのキリスト教美術には登場してきました。だからこそ欧州のあらゆる場面にことある度にこのマークが現れて、古くからヨーロッパ史を牛耳っていた印象を与えてきたのです。(ただフランス革命などメイソンが組織として大きな役割を果たした歴史的事件も少なくなかった）。
1525年のエマオの晩餐。テレ東の某番組ではメイソンとの関係性を指摘されていた
ついでに１ドル札の関連で言うと、1ドル札にはプロビデンスの目だけではなくユダヤのマーク・ダビデの星もモチーフにされています。この事実と相まって現代アメリカはユダヤとフリーメーソンに牛耳られてると指摘する陰謀論がありますが、これも独立戦争時にユダヤ人資産家がアメリカ人を支持したからというだけで、それ以上に深い意味は持ちえません。
アメリカにおけるフリーメーソン
ただ先ほども述べたようにフリーメーソンがアメリカ建国に果たした影響は小さくありません。例えば、自由の女神。これはフランス系フリーメーソンからアメリカ系フリーメーソンへの贈り物ですし、フランス人権宣言はフリーメーソンの考え方を元にしたものですので、それを元にした合衆国憲法も必然的にメイソンの直接的な影響が認められます。（さらに言えば日本国憲法は合衆国憲法を元にしてるのでメイソンの影響を間接的に受けたといえます。現にマッカーサー含め多くのGHQ幹部、鳩山一郎、東久邇宮首相など当時政界にはメイソンリーは多かったんです）。
フランス人権宣言上部にプロビデンスの目が描かれている
ただフリーメーソンは秘密結社ではありますが、何か世界的なレベルで一つの目的に向かって動いてるわけではないので現代世界に及ぼす影響力は極めて限定的です。
現在、世界には600万人のメイソンがいると言われていますが、発祥国イギリスよりもアメリカの方が多く会員数を抱えています。（建国当初にヨーロッパから渡ってきた思想家などに非常にメイソンが多かったため）
因みにそのアメリカでは初代ジョージワシントンから数えて、これまで14名の大統領がフリーメイソンでした。（ワシントン、モンロー、ジャクソン、ポーク、ブキャナン、ジョンソン、ガーフィールド、マッキンリー、セオドア・ルーズヴェルト、タフト、ハーディング、フランクリン・ルーズヴェルト、トルーマン、フォード）
1945年、ポツダム会談の合間にメイソン同士で握手を交わすチャーチル英首相とトルーマン米大統領
存命中だとビルクリントン大統領がデモレー団というフリーメイソンの下部組織に参加してた記録が残ってはいますが、アメリカのロッジにメイソンであったという記録は残っていません。(東京ロッジの本部一階には歴代のメイソンアメリカ大統領の一覧があるらしい）。
他にもアメリカ人だとペリー総督、マークトウェイン、カーネルサンダース、スタインベック、ヘンリフォード、ワーナー兄弟、ジョンウェイン、カメハメハ大王などが名を連ねています。ウォルトディズニーがフリーメイソンであったかどうかには諸説ありますが、ロッジに入会記録が残っていないのでフリーメイソンではなかったと考えるのが現在では通説とされています。（クリントンと同じく下部組織デモレー団に参加してた記録は残っている）
ホワイトハウス設計者、国歌作詞家、作曲家はいずれもフリーメイソン
フリーメーソンの性格
フリーメーソンってでも謎の組織ですよね。最近はNetflixをはじめ結構フリーメイソン内部の撮影に成功してますが、それでも庶民からは遠い存在にあります。
というか、そもそもなんですけど、秘密結社ってなんだと思います？
実はフリーメイソンが秘密結社的性格を帯びたのは比較的最近のことなんです。すでに結成から300年ほど経ちましたが、第二次世界大戦以前は比較的オープンな社交団体として知られていました。しかしながら、ヒトラーがユダヤ教徒と並んでフリーメイソンを迫害するようになったため、戦後は秘密結社として世間の目から隠れて行動するようになったのです。(20万人ほどのメイソンが殺されたという）
ヒトラーはオリンピックをメイソンが考案したものとして開催を渋ったという。1933年に絶縁宣言
先ほど秘密結社的性格を強めたのは第二次世界大戦以後と述べたんですけど、入会方法やフリーメイソン内部の活動についてはそれ以前から秘匿事項とされてました。参加資格があるのはあくまで白人の健康男性のみ。第二次世界大戦の影響で、戦傷者含む障害者の受け入れと、人種による差別を撤廃しましたが、女性の参加は現在に至るまで基本的には認められてません。(因みに日本は米軍関係者が多いのでミリタリーロッジと呼ばれている）
また加えてメイソンに参加するには何らかの神を信仰していることも求められます。ただこれは何か特定の宗教に入ってる必要はなくて、カトリックのように絶縁状態にある宗教でも、神道のような八百万の神でも基本的には何でもOKとなってるそうです。(国によっても違うらしい）
フリーメイソンの将来
アメリカ建国やフランス革命など、現代世界構築に大きな役割を果たしてきたフリーメイソンですが、ここにきて会員の高齢化に伴い、会員数減少による影響力の低下という問題が浮上してきています。特に若年層における認知が専ら都市伝説に偏ってる影響もあり、組織は大きな変化に直面しているそうです。（ただダヴィンチコードの世界的ヒットの影響でフリーメイソンの会員数はやや持ち直したよう）
当然ですが、フリーメーソンは陰謀論とは関係なく存在する非常に伝統のある団体です。特にモンテスキューやヴォルテールをはじめ、現代の人権思想の下地を作ったのはフリーメイソンでした。もちろん秘密結社という外部のレッテルがメイソンの存続を助けた側面はありますが、ことさらに陰謀論と絡められることは、歴史的事実を歪め、後世における研究を妨げる可能性があります。私自身はもう陰謀論には一周回って興味がないので、フリーメーソンに参加したいとかそういう気持ちはないですが(笑)、陰謀論とは別に歴史的側面からフリーメイソンに関心を持つ人が増えてくれると嬉しいなと思います。
因みにダヴィンチコードの著者ダンブラウンはメイソンとモーツァルトにまつわる新作を書いてるそうでまた陰謀論ブームは加熱しそうです笑(モーツァルトの魔笛はフリーメイソンをテーマにしたオペラ）。
参考文献：
吉村正和, 1989, 『フリーメーソン』 (講談社現代新書)
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%95%E3%83%AA%E3%83%BC%E3%83%A1%E3%82%A4%E3%82%BD%E3%83%B3 ウィキペディア『フリーメーソン』 2021/6/1閲覧
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