慶應の文学部には17専攻あり、中でも英米は、心理学、図書館情報などと並んで、エグ専と言われることが多いようです。
そして、晴れてえぐ専と呼ばれる英米専攻に来た自らの意思で進んできた2年生は、まず三田で必修の洗礼を受けます。5つの必修を取る必要があり、この点が英米がえぐ専と呼ばれる最大の由縁です。(他はそんなに辛くない)
2年から3年の進級条件
2年から3年に上がるためには、(語学を除くと)「基礎講読Ⅰ・Ⅱ」「現代英語学Ⅰ・Ⅱ」「英語史Ⅰ・Ⅱ」「英文学史Ⅰ・Ⅱ」「米文学史Ⅰ・Ⅱ」の組み合わせのうち3組以上を取得をしてることが求められます。つまり春に現代英語学と英語史を落とした場合、秋学期はこの二つ以外は落とすことができなくなります。そのため2年次は選択必修科目(~演習)や選択科目よりも、必修にリソースを多めに割いた方がいいと思われます。なお私のように暇な4年にあえて必修(と来日)を残すというリスキーな手もあります笑。
2年の必修
目次
基礎購読:
これはいわゆる中高でいうクラスに該当するもので、担任にあたる専任教員のもと10人ちょっとで少人数授業を行います。授業自体は英語力の向上を旨とするもので、シェイクスピアの本を読んだり、カズオイシグロの本を読んだりします。比較的回転率は高めですが、少人数ということもあって横のつながりは強くなりやすく、またこの時に担当してもらった先生のゼミに入るケースもなんだかんだ多いようです。
現代英語学:
こちらは、英語の文法などをアカデミックに読み解いていく授業です。先生が基礎英語を担当していることもあって、比較的緩めの雰囲気で進みます。真面目に授業に出ていれば単位は来るでしょう。
英語史:
こちらはその名の通り、英語の歴史を辿る授業です。世界史と英語のちょうど中間のようなもので、歴史と英語が好きというような人はかなり楽しめると思います。こちらも普通に授業に出ていれば単位は来ると思います。
米文学史、英文学史:
毎年春になると、英米の教科書で積み上げて写真を撮るのが一つブームにもなったりしてますが、その教科書のほとんどが実はこの二つの文学史の授業によるものです笑(実際はほとんど使わない)。先生によって違いはあるのですが、大抵は試験一発で、ググっても出てこない授業でしか扱わないような内容が出てくるので真面目に出席はしといた方がいいと思います(zoomによるリアルタイム同時配信もあり)。英米必修、最大の山場です。
比較的真面目な学生でも落としてる例が毎年見受けられるので、ある程度落としてもしょうがないくらいの気持ちの方がいいかもしれません。学年が上がった最初の授業で「お前も落としの!?」なんて会話が聞こえてくるのも、英米の風物詩です。
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5つの必修がありますが、とはいえちゃんと授業を聞いていれば直前1~2週間で対応できるのも多いので、そこまで恐れる必要はないと思います。
3年から4年、および卒業条件
基本的には3年から4年の進級要件は研究会(ゼミ)のみになります。他方で卒業するためには、'演習'と語尾につく選択必修を10単位(一コマ1単位なの注意)、そのほか選択科目を32単位以上取得する必要があります。選択必修は英米に関すること、選択科目は英米外の選考も自由に取ることができます。基本的には2年次は必修が中心、3年次、4年次で選択必修、選択科目を重点的に取りますが、いわゆる英米が'エグい'と言われる所以は必修にあるので、これらはそこまで大変ではないでしょう。(4年生はゼミのある曜日だけ授業を詰め込んであとは全休という人もいる)
詳しくは履修案内を参照
3年生
3年に上がると今度はゼミに入ります。2年次の必修がなくなるので、負担は比較的軽くなりますが、音声学、古代中世英語学が新たに必修として課されます。
ゼミ選び
ゼミは現在、英文学から米文学、言語学、言語史など6つほどあります。毎週授業はあるのですが、どちらかといえば授業というよりはコミュニティに近いもので、ゼミによってカラーはかなり異なります。とあるゼミは飲み会が激しく大して勉強してるイメージもなければ、文学好きが集まって聖地巡礼旅行を個人的にしてるゼミなんかもあります。基本的には同期のメンツに左右されると思いますが、綿々と続く伝統でもあるので、ゼミ選びは慎重にした方がいいと思います。(ゼミ間の対抗意識はかなりあるw)
音声学(必修):
比較的ハードと言われています。その名の通り、”文学”ではなく、発音に関する授業なので医学的なアプローチを取ります。(東京医科歯科大学などから先生を呼ぶ)。発音矯正などに興味があれば、楽しいかもしれません。(2年次に取ってしまう猛者も結構いるw)
古代中世英語学(3年次指定必修):
こちらもハードと言われます。まず現代英語とは大きく隔たりのある古英語、中英語を学ぶ授業で、とても英語とは思えないものなので、第二外国語の印象を受けるかもしれません。卒論で18世紀以前、聖書、ラテン語文献周りを扱うなら必要になるものではあるのですが、多くの学生にはやる意義を見いだせないかもしれません。(他は真面目にやれば英語の勉強にもなるので、いくらでもやる意義を見出せる)
アカデミックライティング :
よく間違えられるのですが、これは必修ではありません。英語での作文指導をするもので、週に何コマか開講されてます。自分自身はとってませんが、取っておけばよかったと後悔することもなかったので、必ずしも取らないといけない科目ではないと思います。ただ先生方には強く推奨されてるものなので、卒論が心配なら取っておくと安心です。
選択必修科目(演習):
これは英米に限りませんが、必修に合わせて選択必修科目というのを取らなければいけません。例えば「英文学”演習”」といったように語尾に演習がつくものが該当します。その名の通り演習のため、授業ごとに作業が付随しますが、一度も予習を求められなかったこともあるので授業によって大変度はまちまちでしょう。
ガリバー旅行記を批評的に読みていくものや、ジェインオースティンの作品読み比べ、聖書のバージョンを比較研究、翻訳の仕方を教える授業など、英語に関することについて幅広く開講されてます。大抵は最終レポートに大きな比重が置かれています。
選択科目:
こちらは、演習ではなく通常の授業で、英米に限らず他選考のも受講することができます。文学部でありながら、映像制作、福島被災地、プログラミングの授業などかなり幅があります。かなり散らばっているので中には少人数のものも多く、金5の英文学Vは先生とほぼマンツーマンでした。コロナで行けませんでしたが、比較的少人数だと「このあと飲みにいく?」なんて形で授業外での付き合いももしかしたらあるかもしれません。
おすすめの選択科目:
個人的に取っておもしろかったなっていう授業をリストアップしました。
「文章と表現」
こちらは三田文学が全面協力のもので、「新人賞受賞を目指す」という明確な目的のもと開講されます。慶應出身の作家を増やすべく、芥川賞作家などをゲストスピーカーにお呼びして自分の文章を添削してもらえます。人気がありますが、現在は人数制限はしてないようで、毎年100名ほど受講生がいると思われます。
「デジタル書物学」
慶應が所有する最高の資産といえば「グーテンベルグ聖書」でもありますが、このグーテンベルグ聖書購入をきっかけに始まった歴史ある授業です。人文学とコンピュータの融合という比較的珍しいもので、今年は多かったですが例年は比較的少人数授業で、さまざまなゲストスピーカーをお呼びしました。最終課題は自身でブログを作って、そこでレポートを公開するというユニークなものでした。
「言語学特殊XI」
音声学の巨匠・川原先生によるものです。音声学ですが、先程の必修とはだいぶアプローチが違って、先生は暗記を一切要求してきません。ポケモンの名前、メイド喫茶など身近な話題を例に取ることで音声学の楽しさについて再発見していきます。なかでも魅力はここもゲストスピーカーで、山寺宏一さん、ラッパーのZeebraさんや晋平太さん、ゴスペラーズの北山さん、ほかにもアナウンサー志望のためにアナウンサーを呼んでくれたりします。(名前は出せませんが)
まとめ
英米はえぐいと言われますが、それは大学を遊ぶ場所として捉えた場合、相対的に見てという意味で実際は言うほどエグくはないのかなとは思います。とはいえ、必修の量が他専攻より多く、英語が必須な点で見れば他の専攻よりハードなのは間違い無いでしょう。しかしながら、英米に来てる人は比較的優秀だなと思うことも多く(特に後輩)、学生時代に一度学業に本気で向き合うという経験が財産になったという友人をたくさん見ているので、ぜひ後輩は英米を志望してみてください!