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【慶應文学部は就職悪いの?】350社のデータから就活事情を現4年生が検証する

 

巷では文学部は、経済や法といった実学ではないので就活に悪いと言いますが、いったいどこまで本当なのでしょう。つい先日就活を終えた慶應文学部4年の私が、実際の肌感覚と大学から公表されたデータ(350社)をもとに、実情を紐解いていきます。

 

文学部が悪いと言われる理由

授業の内容が就活と直結しない

まず文学部が悪いと言われる理由には、ゼミなど大学で行う専門的な内容が就活に直結しないことが挙げられます。経済学部や法学部においては、卒論で例えば「ヤマト運輸の物流改革を提案する」「地産地消を通してアグリビジネス活性化」「都市規模に関する人口的な側面からの提案」といったビジネスに直結するような内容を扱い、時によっては企業と共同研究することもありますが、文学部では小説、文化論、社会学、芸術などを扱います。この点大学で習う内容がビジネスとは距離を置いており、就活の面接、ESで若干の不利になることがあるかもしれません。

 

就活に対する意識がそもそも低い

また大学の授業でビジネスに触れることが少ないため、就活に興味を持ち始めるのが遅いということもあります。特に文学部では、あえてビジネスには興味がないから来た、文学が好きだから来た、というパターンも非常に多く、文学部全体で就活に対する機運が高まるのが非常に遅いです。例えば経済学部ではすでに3年に上った段階でかなりの人数が就活に動き始めるのに対し、文学部では年明けても動かない人も多く、外資など就活を始めた時期にはもうすでに締め切ってる企業も多かったりします。

 

※ただコロナを挟んだ2022年ごろより文学部でも就職活動の早期化が始まっており、24卒は他学部と動き出し始める時期は相違ないように思われます。

 

大学から公表されたデータを業界別に紐解く

ここで大学から公表されたデータを紐解いてみましょう。現状手に入るデータは2021年のものなのでこちらを紐解いていきます。

3名以上の学生が就職した企業一覧

 

文学部の場合、人数は全体で800名と経済と法の1200名より少なくなっています。また就職人数で見ると文学部は634名、経済学部が1018名、法学部が1012名と少ないことを踏まえ、文学部は実績に1.6掛けをした人数で比較します。文学部の()内の人数が1.6掛けして四捨五入した数字になります。

 

不利ではない業界

損保

就職先 文学部 経済学部 法学部
東京海上日動 11(18) 9 16
日本生命 2(3) 7 6
第一生命 4(6) 1 3
三井住友海上 5(8) 6 9
明治安田生命 5(8) 2 5

数字だけ見ればむしろ文学部が強いと言えます。

テレビ局

就職先 文学部 経済学部 法学部
NHK 8(13) 3 2
テレ朝 1(2) 1 1
日テレ 0 0 1
フジ 1(2) 2 1
TBS 0 2 0

テレビ局は学部差別が少ないことでも有名ですが、NHKを除くとそもそもの採用人数が極僅少です。(アナウンサー含む)

銀行

就職先 文学部 経済学部 法学部
みずほ銀行 2(3) 15 14
UFJ 7(11) 18 16
三井住友 5(8) 6 12

みずほは少ないですが他の銀行ではそうでもないことがわかります。

出版

就職先 文学部 経済学部 法学部
集英社 1(2) 1 2
日経 1(2) 0 8
KADOKAWA 2(3) 0 0

そもそも採用人数がかなり少ないです。また講談社や小学館、新潮などは3名以上の就職がありませんでした。

IT

就職先 文学部 経済学部 法学部
楽天 12(20) 13 14
サイバーエージェント 3(5) 7 1
日本IBM 4(6) 7 1
日本マイクロソフト 0 1 0
野村総合研究所 3(5) 6 6
NTTデータ 10(16) 9 10
富士通 4(6) 7 6

IT系は文学部が不利ということは全くないように思われます。

そのほか

就職先 文学部 経済学部 法学部
オリエンタルランド 1(2) 0 3
JCB 4(6) 3 2
財務省 2(3) 2 1
東京都 4(6) 1 7
ジョンソンアンドジョンソン 1(2) 1 2
セールスフォース 2(3) 2 2

 

やや不利か

広告代理店

就職先 文学部 経済学部 法学部
電通 2(3) 6 6
博報堂 2(3) 9 5

広告代理店は文学部はやや不利と思われますが、電博が寡占してることを考えると業界全体で採用人数がそもそも少ないです。

外資コンサル

就職先 文学部 経済学部 法学部
アクセンチュア 10(16) 20 17
PWC 3(5) 21 19
ATカーニー 0 1 2
ボストンコンサル 0 2 0
デロイト 2(3) 9 7

外資コンサルも不利と思われますが、PWCなどはこの2年で採用人数を大幅に増やしており、23卒は文学部からは2桁出てると思われるので、著しく不利とまでは言えないでしょう。

不利

5大商社

就職先 文学部 経済学部 法学部
伊藤忠 2(3) 7 8
三菱商事 1(2) 8 9
丸紅 2(3) 2 9
三井物産 0 10 10
住友商事 2(3) 8 7

会社によって隔たりが大きく、丸紅のように他学部と差がないところもあれば、三井物産や三菱商事では文学部は著しく不利になっています。(そもそも体育会系が有利)

外資金融証券

就職先 文学部 経済学部 法学部
ゴールドマンサックス 0 3 5
UFJモルガン 0 3 3
シティ 0 0 3

外資金融証券ははっきりと文学部が不利なのがわかります。ただBNBバリバやバークレイズ、クレディスイスといった超名門は慶應でも3名以上の就職がなく、経済や法であってもほぼ入れないでしょう。

その他

就職先 文学部 経済学部 法学部
サントリー 0 2 2
トヨタ 0 0 2
リクルート 1(2) 7 4

 

※(注意)年度によって大きく変更あります。例えば2020年度、トヨタは文学部1名に対して法学部は0名で、サントリーは文学部2名に対して経済学部は0名でした。

 

概括

これを見る限り文学部が他学部に比べて就職が悪いというのは完全に迷信です。また留意しておいて欲しいのは、文学部だとここで挙げた企業に入れるのは5人に1人ほどで、慶應から3名以上の就職がある350の企業になると、800名のうち360名ほどのみが就職先として選んでることになります。これを高いと見るか低いと見るかは人それぞれだと思いますが、慶應全体でも上場企業に入れるのは4割程度であることを考えると、文学部だから著しく不利というわけではないでしょう。

また文学部が0になっている企業は他学部においても最難関であるということ、人気のあるコンサルや商社はそもそも全体から見れば採用人数が少なく、学部関係なく最難関であるということを踏まえると、早慶のボリューム層は必ずしも名の知れた企業に行ってるわけではありません。

 

落とし穴

特に慶應の学生が勘違いしがちなのは、慶應というネームブランドで勝負できるということはほとんどないということです。一般的に名のしれた企業へエントリーする際は、慶應は上位数%ではなく、ほとんど周りは早慶もしくは旧帝のなかでエントリー総数の数%の席を争うことになります。そのため慶應であるというその学歴ブランドで戦えることはまずあり得ません。

しかしながら各企業は、学歴不問としていながらこの大学から今年何人取るという調整をしていることが多いので、その点学歴というのはスタート地点ではアドバンテージがあります。特に慶應の場合は先輩との縦の繋がりも強く、仮に接点がなかったとしても学生部を介して、ほぼ全ての企業にいるOBOGとつながることができます。

ただ慶應だからというプライドだけをぶら下げていると、サマーインターンの時点で挫折を迎え、本選考に向かう前に就職浪人を決意して休学をするというパターンも非常に多いため、学歴にあぐらをかかないということは非常に重要です。

 

まとめ

要は本人次第で、いいとこ行くやつは学部関係なくいいとこ行くということです。

大学は高校とは違って、自分の学部に沿った内容を中心的に学びます。そのため、法律に興味がないのに法律の勉強など、4年間興味のない勉強をするのは辛いです。そのため、素直に自分の好奇心に従って、キャンパスライフを豊かにする上で重要でしょう。特にアナウンサー志望の人は、かなり狭き門であるのにも関わらず、落ちることを想定せずにひたすら学生生活を就活に全振りし後悔している例も現に見聞きしているので、学生生活の全てを就活に費やすというのはやめた方がいいと思います。

また就活で問われるのが、学生時代に何を打ち込んできたのか(ガクチカ)? 資格試験や学歴等、勉強する週間と地頭力はあるのか? サークルやバイトで組織をまとめた、もしくは組織に良い貢献をしたことはあるのか?といったことなので、学部ではなく、やりたいことをやり切る学生生活の方が遥かに重要であると考えます。

 

  • 自己紹介

Yutaro

慶應義塾大学文学部4年 /TOEIC960 / Python歴2年(独学)、PHP,Javascript歴5ヶ月(業務)/ 応用情報技術者 /(⬇︎ホームリンク)

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