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日本軍は未接触部族の【北センチネル島】に上陸したのか?

北センチネル島とは、東南アジアに近いインド洋に浮かぶ小さな島です。しかしそこに住む先住民は、これまで外部の人との接触を拒み続け、上陸しようとした人を殺戮するなど攻撃性の高さでも知られています。現在はインド政府により接近禁止になっているのですが、第二次世界大戦期には日本軍がこの辺りを制圧していました。果たして日本軍は北センチネル島をどのように扱ったのでしょうか?

※出典表記なしは全て日本語、英語のWikipediaより

 

北センチネル島の歴史

三宅島ほどの大きさと言われる北センチネル島には、センチネル族が推定200人ほど住んでいると見積もられており、人種的にはネグロイド、いわゆる黒人に近いとされています。(一説にはもう20人くらいしかいないのでは?とも言われている)。しかしながら地理的な観点から人種を見てみると、北センチネル島は白人のインドでもなく、東南アジアのモンゴロイド(黄色人種)とも違うということから、おそらく大陸を通らずにアフリカから直接船でこの地にやってきたと言われています。

センチネル族の生態、および彼らの話すセンチネル語に関してはほとんど何もわかっておらず、近隣にいるオンゲ族やジャラワ族が一応同系統ではないかと推測されています。なおこの後者二つの民族もセンチネル族と同じく外部との接触がほとんどなかったため、現代人が有する病気に対する抵抗力がほとんどないと言われており、インド政府により接触が禁止されています。(オンゲ族は島の存在を知っており、特に文化的にも近いとされている)

オンゲ族

 

こうした近隣の民族とも、太古の昔には若干の交流があったのではないかと推測されていますが、この数百年は外部との接触がほとんどありませんでした。

 

しかし1880年に大英帝国の海軍がこの島に短期間だけ上陸したそうで、記録によると豚の頭蓋骨の山があり、インドイノシシが食料源になっていることがわかっています。なおこの際に大英帝国はこの時に数人を島外へ持ち出したようですが、すぐに島民2名が弱って死んでしまったため、残りの島民は島へ戻したと言います。

 

一説にはこの時を境にこの民族が外部に対する攻撃性を高めたのではないかと指摘されています。またその後の調査により金属を使用していることから、何らかの形で金属を作る技術は有していることがわかっています。

上陸する前後にアンダマン諸島で撮られた探検隊の写真

 

日本の領土へ

その後、この島は完全に隔離されていたわけですが、1942~1945年までこの島は日本軍の管理下に置かれています。

アンダマン諸島への上陸作戦を決行する旧日本軍

 

近隣のアンダマン諸島へ日本軍は上陸していたわけですが、しかしながら果たして日本軍は北センチネル島の実情を把握していたのか、上陸したのかということについては記録が一切残っていません。おそらく、小さな島で地政学的にも意味がほとんどないため、ほとんど存在は無視されていたのではないかと推測されます。(大学院で日本史を専攻している友人に聞いても『大東亜戦争史』において北センチネル島は聞いたことがないとのこと)

 

 

ちなみにこの辺りの海域は「作戦状況許す限り速かに占領または破壊せんとする地域の一つ」程度と認識されていたそうです。

 

 

しかしアンダマン諸島はマラッカ海峡への航路という意味ではイギリスにとっても、日本にとっても防衛戦略上の要地であることは間違いありません。戦争晩年にはアンダマン諸島最大都市のポートブレアに対して、イギリス軍が激しい空襲を行なっています。

現在のポートブレア

 

ポートブレアから北センチネル島は50kmということで、原爆が落とされてやっと気づく程度ですが、近くを航行している戦闘機や戦艦はおそらく目の当たりにしたのではないかと考えられます。しかしこれも推測の域を出ず、センチネル島民にどのような影響を及ぼしたかは不明です。

 

 

インド政府管理下へ

ちなみに戦争が終わると、この北センチネル島は東南アジアに近いながらもインド政府の管轄になります。


北センチネル島はちょうど右下にある

 

まずインド政府はこの辺りにいた上記のオンゲ族やジャラワ族などアンダマン諸島先住民との接触を始めますが、北センチネル島のみへの接触だけが遅々として進みませんでした。

 

そこで1991年には、人類学者などを派遣しつつ接触を試みます。この時に一度だけ平和的な接触が実現しており、人類学者は島への上陸を許され、食料の交換を果たしました。(その時の映像がこちら)

 

しかしながら一転、インド政府はこれ以降、北センチネル島との接触を法律で禁じることになります。理由としては島民があまりにも現代文明と隔離されていたために、ウイルスに対する抵抗力がほとんどなく、接触を許せばすぐに絶滅するのではないかと懸念されたからです。

 

海軍や現地の警察を動員して警備にあたっていますが、定期的にインド政府はヘリコプターを派遣して、上空から島内状況を確認しているようです。(島民から弓矢で襲撃されてるなど起こっている)

 

しかしながらこの島へ上陸しようとする人は後を立たず、多くの人がこの島へ上陸したきり帰らぬ人となっています。ちなみに国連によって「未接触部族が孤立して暮らす権利」というのは保証されており、こうした民族が起こした現代人に対する殺戮などは現代文明の法律によって起訴されることはありません。(インド政府管理下ではありますが、インドの法律はもとより、どんな国の主権も及びません)

世界の非接触部族一覧

 

なお南センチネル島は現在は無人島になっており、手付かずの自然が広がっているため、ダイビングスポットになっています。しかし、この海域で寝てる間に船が流され、北センチネル島に上陸してしまった船員が殺されてしまった事件も2006年には起こっており、アンダマン諸島の観光化は進んでるものの、地元警察が警戒を強めているそうです。

 

 

 

 

 

 

 

  • 自己紹介

Yutaro

慶應義塾大学文学部4年 /TOEIC960 / Python歴2年(独学)、PHP,Javascript歴5ヶ月(業務)/ 応用情報技術者 /(⬇︎ホームリンク)

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