慶應文学部全体で900人近くいますが、その中でもいわゆる「エグい」と呼ばれている英米文学専攻を卒業する学生は80名ほどしかいません。しかしながら、その長い歴史と教授陣の質の高さより多くの著名人を輩出しています。そこで今回は、作家、アナウンサー、批評家、英語講師、学者などを中心に卒業生をまとめてみました。
芸能、教師、経済人など
水卜アナ
https://news.yahoo.co.jp/articles/2ab7599a5d083d6fe8ab460bae2c93dd790e1843
水卜ちゃんこと水卜アナウンサー。2010年に英米文学専攻を卒業しました。現在は日テレのアナウンス部副主任も務めながら、Zipや有吉ゼミなど担当しています。
久保純子アナ
https://www.asahi.com/and/creators/junko-kubo/
元NHKアナウンサーの久保純子さん。NHKの現役の局員として身を置きつつ、アイドルアナとして、当時から民放番組出演を果たしました。
森本毅郎アナ
https://www.mtfuji.or.jp/thought/223fellow/takerou_morimoto.html
同じく元NHKアナウンサーの森本毅郎アナ。現在はフリーアナウンサーとして長寿番組になった『噂の東京マガジン』の総合司会なども務めます。
竹内まりや
https://www.asahi.com/articles/ASM955Q43M95UCVL023.html
シンガーソングライターの竹内まりやさん。山下達郎さんと結婚したことで、近年の露出は減りましたが、クリスマスには必ずと言っていいほど彼女の歌を耳にします。ただ実は卒業しておらず、必修の『現代英語学』を落として退学を決意したそうです。
飯島 敏宏
https://www.kyoto-np.co.jp/articles/-/661130
円谷一の要請でウルトラマンシリーズのプロデューサーを務めた飯島 敏宏さんです。国文科に進学するも、頼りにしていた加藤道夫先生(1942年 英米専攻卒)の自殺を受け、英米文学専攻へと転じます。TBSで長らく働いていましたが、円谷プロダクション移籍後はバルタン星人生みの親としてよく知られています。
森田鉄也先生
https://www.asahi.com/articles/ASKDL3TVFKDLUEHF005.html
受験生には馴染み深いかもしれません。モリテツこと森田鉄也先生です。TOEIC990を90回以上取得し、河合塾や東進ハイスクールなどで教鞭を取ってました。
関正生先生
https://mobile.twitter.com/sekimasao
スタディサプリのメイン講師として、CM出演なども多い英語講師です。商学部から転部して英米文学専攻に入りました。著書を100冊以上出してることでも知られます。
ちなみに↓こちらの動画では英米文学専攻時代の思い出が語られています。
肘井先生
https://akahon.net/blog/3
同じくスタディサプリの講師として、受験生には馴染み深い存在だと思います。年間25万人が受講し、東大や京大なとトップクラスの授業を受け持ちます。
こちらでも冒頭で少しだけ英米文学専攻について触れられてます。
重久吉弘
https://www.jmca.jp/prod/teacher/2095
日本最大のエンジニアリング企業で、80カ国にてプロジェクトを遂行する日輝ホールディングスの代表を務める重久吉弘社長です。中東での実績が高く評価され、トップまで上り詰めました。
そのほか:
アジア女性経済会議(AWEC)代表の槇徳子
オセロ世界チャンピオンの村上健
料理研究家で衆議院議員の前川恵
起業家の谷本 肇(EOY 2005ファイナリスト)
などがいます。
文学
安岡章太郎
芥川賞作家の安岡章太郎です。教科書に載っている『サーカスの馬』でも馴染み深いでしょう。英米在学中に学徒動員で徴兵され、レイテ島の戦いにおける数少ない生存者でもあります。
夏樹静子
https://www2.nhk.or.jp/archives/jinbutsu/detail.cgi?das_id=D0009250475_00000
ミステリーの女王こと、夏樹静子さんです。英米在学中よりNHKで脚本を書き始め、ミステリー文学大賞や日本推理作家協会賞などを受賞しました。「検事 霞夕子」シリーズや「弁護士 朝吹里矢子」シリーズはTVドラマとしても人気があります。
鈴木孝夫
https://www.shinchosha.co.jp/sp/writer/1845
言語社会学における権威です。医学部から転部して英米文学専攻に編入しました。ミシガン大学時代に構造言語学の「文字は言語ではない」に反発し、独自の理論を展開しました。そのほか英語公用語化論や英語帝国主義批判の論客としても積極的に活動しました。
井筒俊彦
司馬遼太郎が「二十人ぐらいの天才が一人になっている」と称するなど語学の天才として知られる井筒俊彦です。経済学部から転部して英米文学専攻に入りました。英米在学中より旧約聖書に特に強い興味を示し、最終的には30以上の言語を操ったといいます。著作、論文をほぼ全て英語で書いてるため海外での評価の方が高いと言われます。
英米に在学してた頃の写真。ちなみに右から2番目の池田彌三郎は慶應文学部の入試から国語を外した人物
野口米次郎
世界的な芸術家イサム・ノグチの父親としても知られ、批評家でありながら、ノーベル文学賞の受賞も期待された詩人です。英米文学科を中退して、汽船ベルジック号で渡米し、現地で試作に耽りました。
江藤淳
小林秀雄のあとを継ぎ、戦後最も著名な文芸評論家です。英米在学中に発表した『夏目漱石』が注目を集め、大江健三郎や司馬遼太郎とともに気鋭の新人として注目されます。英米在学中は大学当局と対立しますが、晩年は慶應の教授も務めました。しかしながら最後は鎌倉の自宅にて自殺を遂げます。
安東伸介
http://www.tatsumizemi.com/2013/01/keioeibunsymposium.html
幼稚舎より文学に強い興味を示し、慶應高校を首席で卒業したのち、英米文学専攻に入りました。英文学を日本で論ずるという大きな土台を作り上げ、中世英文学の権威になる一方、劇団四季に「オペラ座の怪人」の翻訳を提供するなど多方面で活躍しました。
上田敏雄
日本において最初にシュルレアリスム宣言を行いました。英米在学中に萩原朔太郎に才能を見出され、詩壇デビューを果たします。卒業後に創刊した『薔薇・魔術・學説』が評価され、超現実主義の旗手となりました。
森田思軒
慶應では英文科を修めましたが、漢文学者として名を馳せた森田思軒です。『報知新聞』の編集長として敏腕を振るったほか、従来の乱訳語調を一新して生み出した「周密文体」という独自のスタイルは近代文学史に大きな影響をもたらしました。
多田智満子
http://poetrykanto.com/issues/2007-issue/tada-chimako
現代詩花椿賞や読売文学賞、現代詩花椿賞を受賞したフランス文学者であり詩人の多田智満子です。英米在学中には結核を患い半年間休学しますが、これが作家活動の原点になります。彼女の個人的感傷は一切排除し、形而上的思考とユーモアに満ちた作風は高く評価されました。
佐山 和夫
https://sabr.org/latest/sabr-member-kazuo-sayama-elected-to-japanese-baseball-hall-of-fame/
ノンフィクション作家として、野球殿堂表彰者に選ばれた佐山和夫です。甲子園の創設にも大きく関わりました。そのほかジョセフ・アストマン賞やロバート・ピーターソン賞を受賞するなど、アメリカ野球界でも高く評価されています。
瀧口 修造
近代日本を代表する美術評論家、詩人、画家の瀧口 修造です。日本における正統シュルレアリスムの理論的支柱と言われています。大学の講義は出ずにひたすら図書館で原書を貪り読んでいたそうですが、英米在学中に『超現実主義と絵画』を翻訳したことで、美術界に絶大な影響を及ぼしました。
まとめ
英米文学専攻を卒業した人物をまとめてみましたが、こうやってみると作家や学者などが多く、また初めから文学部ではなく途中で転部してきた学生も多いということが分かります。どうしても英語、英米文学を学びたいという高い熱量と優秀な学生が、英学塾として始まった慶應の英米文学専攻の伝統を作ってきました。また最近は入試において英語の比重が大きいことから比較的英語が得意な学生が集まるようです。社学や人間科学といった潰しの効く学問が好まれがちですが、英語を目的、またそれをさらに手段として文学や文化を包括的に学びたいという学生には、英米文学専攻をおすすめします。