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【ユダヤ人はなぜ天才】人口比0.5%のユダヤ人がノーベル賞の30%を占める理由

ユダヤ人は賢いっていうステレオタイプありますよね。果たしてそれが遺伝によるものなのか、慣習によるものなのか。。。ユダヤ人は迫害されてきたから、唯一人には奪われない「知識」を重視したという慣習説と、人口比率に対する人材輩出力の高さからなにか遺伝的なレベルで他の民族より優れているのではないかという二つの説があります。前者が一般的ですが、後者の遺伝説は人種差別的なダイナマイトとして、白人至上主義を肯定しかねない非常に危険な議論でもあります。(ただブラックジューだったり開封のユダヤ人など非白人のユダヤ人もたくさんいる)

 

ユダヤ人とは?

そもそもユダヤ人って何なんでしょう?ユダヤ教を信仰してる人がユダヤ人?それならば今から改宗すれば日本人の自分もユダヤ人になれる??。そもそもユダヤ人を単にユダヤ教を信仰する人たちと還元してしまうのには若干の無理があります。というのもユダヤ教というのは単なる宗教というよりは、一つの宗教民族共同体のようなものだからです。英語でいうreligionという言葉が当てはまらないように、神道のような、民族の風習を支える生き方と定義した方が本質には近いのかもしれません。(ユダヤ人の中にも無神論者だったり、イスラエル解体論者など様々な宗派がいます)。

 

ユダヤ人の有名人

ここで本題ですが、いったいなぜユダヤ人はここまで優秀なのでしょうか?芸術家、学者、そして経営者にユダヤ人は多いと言われますが、例えば学者ならアインシュタインやマルクス、心理学のフロイト、アドラー、その他にもマネジメントで有名なドラッカー、言語学者のチョムスキー、科学者のオッペンハイマーやノイマンなどが挙げられます。(ノーベル賞受賞者800人のうち、少なくとも160人はユダヤ人であるとされてます)。

また経営方面だとロスチャイルド家に始まり、ゴールドマンサックス、ロイター通信、トイザらス、グーグル(ゼルゲイ)、マイクロソフト(バルマー)、Facebook、ブルームバーグ、マクドナルド、Dell、オラクル、スターバックス、ラルフローレンの創業者がいずれもユダヤ人です。また映画会社に限っていうと、ワーナーブラザーズを起こしたワーナー兄弟、20世紀フォックスのウィリアムフォックス、MGMのルイス・メイヤー、パラマウント映画のアドルフ・ズーカー、ユニバーサルスタジオのカールレムリ、コロムビア映画のハリーコーンがなんと全員ユダヤ人です。

ちなみに映画業界にとりわけユダヤ人が多いのは、ヨーロッパから迫害を逃れて渡ってきたユダヤ人が最初に目をつけたのが興行(ショービジネス)だったことに由来します。現在でもその系譜が受け継がれており、スピルバーグ、ハリソンフォード、スタンリーキューブリック、タランティーノ、ビリージョエル、ナタリーポートマン、ウッディアレン、ボブディランなど多くのユダヤ人がハリウッドで活躍しています。

それではいったいなぜ人口比0.5%に過ぎないこれらのユダヤ人がここまで世界で活躍することができるのでしょうか?先ほど、慣習説と遺伝説についてお話ししましたが、実際には複合的な要因が絡んでいると言われます。

 

タルムードという風習?

ユダヤ人は離散と捕囚という二つの考え方で定義されます。簡単にユダヤ教の歴史を説明すると、現在のイスラエル辺りに起源を持つユダヤ人は、イスラム教やキリスト教による迫害によって自分の土地を追い出され、世界中に散ることになります。

そんな土地と民族を切り離されたユダヤ人でしたが、彼らは地域差こそあれ、みなユダヤ人として独自の風習を守り続けました。その一つにタルムードという伝統があります。タルムードとは「いったい自分は何者であり、ユダヤ教とはいったい何なのか」ということについて深く掘り下げる学問体系のようなもので、ユダヤ人はここに基づく知的欲求を常に大切にしていました。

かなり初期の段階から、他宗教に比べても学問を重んじるという考えは強かったようで、帝政ローマ期にもイェシヴァと呼ばれる塾を運営したりと、ラビと呼ばれる知識人の元に集う文化があったりしたそうです。

また世界に離散したユダヤ人はその場、その場で外来の学問と接触し、イスラム神学だったりギリシア哲学などを柔軟に取り込みます。その後、フランス革命が起こり、ナポレオンによって市民権が与えられると、ついにユダヤの考え方と世俗の学問が結びつくようになります。ここでヨーロッパに根を下ろしたユダヤ人は今度は、商業や経済、学問といった分野で多いに活躍するようになるのです。

つまり外来の学問との接触、および世俗の文化との融合によって、ユダヤ人が長らく維持してきた知的エネルギーというのが良い意味で引き出さのが、ユダヤ人の人材輩出の理由の一つかもしれません。

土地を失った民として

他方で、こうした土地と民族が切り離されたという不安定な状況がユダヤ人の才能を育てたという話もあります。彼らはイスラエルの地を追放されると、ヨーロッパ各地に散りましたが、同時にキリストを殺害した民として度々迫害にあってしまいます。そうした不安定な世の中を生き抜く術として、彼らは商業や金融といった分野において才を磨きます。具体的には、異教徒と折り合いをつけるための契約だったり、常に迫害されるかもしれないという危機感から生まれた現実感覚が、ここで磨かれたといいます。こうした現実感覚の才能や、知識を重要視する文化は商業においてのみならず、学問においても独創性を発揮する遠因となったといいます。

学ぶことを重視する価値観を維持しつつ、土地を失った民として彷徨いながら、その地で生きる活路を見出さなければならなかった民族的運命。このような、歴史的、文化的なさまざまな要因が複合的に絡み合って生まれたのが現在の「創造性豊かで、行動的で、外来の学問に対しても柔軟なユダヤ人」というユダヤ人像を作り上げたと言えるのではないでしょうか。

 

最後に

ユダヤ人にも様々な人がいます。単に優秀な人とステレオタイプを押し込むのは、そのほかの側面を無視することになり、人種認知の断片化を伴います。しかしながら同時に人口比率からすると突出して優秀な人材が多いというのはユダヤ教の無視できない側面でもあります。特に現代の数学や物理学はユダヤ人の存在がなければ考えられないと言われているように、彼らの創造性は間接的にも我々の現代の生活にも大きく寄与しているのです。イスラエル建国はアラブ諸国において大変な混乱をもたらしましたが、土地を切り離された民族の運命にもう少し目を向けると、当事者意識を持ってパレスチナ問題に向き合えるのではないでしょうか?

 

参考文献:

ユダヤ人とユダヤ教(岩波新書)  市川裕  2019

https://newspicks.com/news/2439722/body/ (ユダヤ人の成功の秘密「タルムード」の教え)8/18日閲覧

http://arinkurin.cocolog-nifty.com/blog/2017/12/post-205a.html (異教徒はユダヤ教に回収できるか)  8/17日閲覧

 

 

  • 自己紹介

Yutaro

慶應義塾大学文学部4年 /TOEIC960 / Python歴2年(独学)、PHP,Javascript歴5ヶ月(業務)/ 応用情報技術者 /(⬇︎ホームリンク)

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