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助詞『が』の正しい使い方

 

一般的に助詞の『が』は日本語文法の中でも最も使い方が難しい部類の1つである。まず大きく分けて主語と動詞との関係性を表す格助詞の『が』。そして前との文との繋がりを示す接続助詞の『が』の2つがある。具体例で見てみよう。

1ここから東京タワーが見える。格助詞

2昨日は雨だったが、明日は晴れるだろう。接続助詞

格助詞の『が』も明確な運用ルールがなく、「入学式が挙行」といったように自動詞的な使われ方をされることも散見されるが、それよりも厄介なのが接続助詞の『が』である。接続助詞の『が』にはさらに①逆接、②単純な接続という真逆とも言える2つの用法がある。

1昨日は雨だったが、明日は晴れるだろう。(上と同じ)逆接

2佐藤栄作がノーベル賞を受けたが、多くの人は嘲笑と皮肉で応じた 単純接続

まずここで言っておきたいのが書き言葉のレベルとして『が』に単純接続の用法はないということだ。一般的に話し言葉であれば感情や抑揚といった言語外コミュニケーションにより逆説かそうでないかは推測できる。しかしながら書き言葉では文章中に登場してきた『が』が逆接か単純接続か判断するためには、前後の文脈に照らし合わせて考えなければいけない。無論、各単語が文脈として意味を成すための関係性を担保するのが助詞であるため、これだと非常にややこしい。

ここで本多勝一氏の文章指南本『日本語の作文技術』を引用する

引用

『この種の「が」を使われたとき困るのは、読者がここで思考の流れを一瞬乱されるからなのだ。「が」ときたら、それでは次は逆接かな、と深層心理で思ったりするが、それはあとまで読まないとわからない。それだけ文章はわかりにくくなる。これが対話として語っているときだと、文章になったときほどわかりにくくはないだろう。抑揚や表情その他が補ってくれる。しかし作文のときには、よほど注意しないと意味のわかりにくい文章の原因になりやすい。』

つまり文章中で『が』用いられた時には、その『が』は一般的には逆接的な用法を期待されるべきだというのである。グーグル翻訳で訳してみても『が』は逆説に訳されるように、ネット上にある膨大なデータベースを見ていっても、圧倒的に「単純な接続」よりも「逆接」で用いられることの方が多いのだろう。

ここで例文をもう1つ

もともと御社に対してはユニークで革新的というイメージがありましたが、実際に説明会に参加してみて大きなイメージの相違はありませんでした。

これも当然、接続助詞『が』の用法のうち、単純な接続を表す。一見逆接に見えるが、これは勿論逆接ではない。そのため一度読んだだけでは、結論がはっきりせず文章の流れを阻害してしまう。

ここでIIJ 技術研究所、山本和彦氏の言葉を引用する

引用

お分かりのように、「が」は逆接で使った方がしっくりきます。しかし、順接の「が」も使いやすいために乱用しがちです。逆接の「が」の例を見てみましょう。

今日は晴れでしたが、明日は雨でしょう

「が」の前と後で、逆のことを言っているので素直に頭に入って来ます。 しかし、「が」が

今日は晴れでしたが、明日も晴れでしょう

のように順接で使われると、期待が外れてハッとします。このように、順接の「が」は文章の流れを阻害してしまいますから、できるだけ使わないように心がけましょう。文章中に順接の「が」がたくさん出てくると、 論旨が追えなくなり、何をいいたいのか分からなくなります。 また、おなじ文献のなかで「が」を順接にも逆接にも使うと、 1つの単語を複数の意味で用いていることになり曖昧です。順接の「が」を使った文章のほとんどは、 そこで切ってしまっても構わないはずです。 上記の例は以下のようになります。

今日は晴れでした。明日も晴れでしょう

順接の「が」は、結論を先送りする効果があると説明する人もいます。 「結論はなるべく早く述べる」という法則からいっても、 順接の「が」の利用は避けた方がよいでしょう。
http://www.mew.org/~kazu/doc/japanese.html(引用元URL)

と述べられているように文章中で『が』が出来てきた時は一般的には逆接を期待すべきで、そこで単純接続的な用法が用いられてしまうと文脈に混乱が生じてしまう。

  • 自己紹介

Yutaro

慶應義塾大学文学部4年 /TOEIC960 / Python歴2年(独学)、PHP,Javascript歴5ヶ月(業務)/ 応用情報技術者 /(⬇︎ホームリンク)

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