古本屋街こと、神保町に初めて足を踏み入れたのは、高校2年生の時。当時受験しようと考えていた大学のキャンパスを見学するついでに立ち寄ったのが最初でした。そのときは、どの店も高校生の自分にとっては敷居が高く、ざっと街の外観を眺めた感想も
「ふーん、なんだこんなものか、古本屋街といえど意外と街の広さは狭いんだな」
程度でした。
それから6年。先日、とある機会がありまして日本英文学会長の原田範行先生にこの辺りを案内してもらう機会がありました。でもあそこって想像以上にディープな街なんですよね。ちょっと外から歩いてるだけでは分からない本当に奥の深い本の世界が広がってます。
さすがは世界最大の古本屋街。
そこで今回は、神保町にこれから訪れる人に手引きになるようなブログを書きました。
神保町とは
神保町とは千代田区にある街の名前で、世界最大の古本屋街として知られています。また書店街としては、英文学圏最大の古本屋街であるヘイオンワイ(イギリス)の10倍以上の規模を有しています。あたりには日本大学や明治大学、東京医科歯科大学、順天堂大学などもあり、学生街としての顔の反面、日本全国の本が集まり、多くの作家も惹きつけています。(隣接しているお茶の水は日本最大の楽器街でもあります)。
歴史は古く、起こりはかつては岩波茂雄氏が何もなかったこの辺りに古書店を開いたことがきっかけです。そしてこの岩波書店の成功により、多くの教養人や大学生が神保町に足を運ぶようになり、また学生街でもあったため、この辺りに全国から集中的に書店が集まることになります。またこうした人の集まりに対応して、「読書の場」を提供すべくカフェの開業も相次ぎました。(現在もクラシカルな喫茶も多い)
第二次世界大戦においては、司馬遼太郎によるとアメリカ軍が「神保町の古書が焼失することは、文化的に極めて大きな損失である」とされ、空襲を避けたと言われています。戦前から「神保町にない本はない」と言われるまでになりましたが、結果として現在に至るまで、書店街として日本のみならず世界を代表する街になりました。
現在でも400軒ほどの書店、三省堂書店の本店、そのほか岩波書店や小学館、集英社など大手出版社の本社もこの辺りに集まっています。
アクセス:
最寄りは神保町駅になりますが、お茶の水駅から楽器街の通りを神保町交差点に向かって下りながら歩くことも十分可能です。
(地図)
書店に訪れる前に
サイト:BOOK TOWN じんぼう
こちらは大変便利なサイトで古書を検索できるほか、書店も検索でき、さまざまな展覧会の情報も調べることができます。UIもかなり(めちゃくちゃ)優れていて、情報のハブになっています。神保町の書店の敷居が高くて入りにくいという方は、こちらでお目当ての本と書店を決めていれば、少し入りやすくなるかもしれません。(とはいえここで蔵書検索できるのは1/20ほど。実際に書店で本を立ち読みすることをお勧めします)
インフォメーションセンター:本と街の案内所
出典:https://twitter.com/jimbou_info/status/898881500015345666?lang=bg
こちらはインフォメーションセンターで、立ち寄れば神保町の書店マップをもらうことができます。神保町はかなり入り組んでいて、外から眺めるだけでは街の奥深さには気づけないことも多いので、まず古本屋巡りを考えてるのならここに立ち寄りましょう。また神保町は実はカレーの街としても知られており、ここでそうした飲食店情報を探すこともできます。
おすすめの書店
※画像は著作権法32条1項に基づき、表記がなければBOOK TOWN じんぼう より引用しております。(問題あればご連絡ください)
三省堂書店
出典:https://www.bunkanews.jp/article/238087/
神保町といえば三省堂本店。1000坪という日本でも有数の広さで、古本屋というより本のことなら何でも手に入るデパートです。現在は改修のための休業中です。(三省堂は「しおりを挟む」という洒落た言い方をしています)
南洋堂書店
建築専門店です。建築家や建築科の学生などが通うといいますが、建築関連の本は写真などだけでも楽しめることが多いです。街歩きの本なども置いており、建築関連の蔵書に関しては、国内のみならず世界から人を惹きつけています。
東京堂書店 神田神保町店
出典:https://bunshun.jp/articles/-/172
私が一番気に入ってる書店です。古本屋というよりかは、おしゃれなブックストアという感じなのですが、ちゃんとした伝統ある老舗で、作家が立ち寄ることも多いそう。中も最新で広く、またカフェも併設されているため、時間を潰すのには最適です。
田村書店
ヨーロッパの哲学書や歴史、フランス文学やドイツ文学を中心に取り扱う書店です。田村書店といえばこの札が有名で、1階には日本語、2階には洋書が並んでいます。
明倫館書店
理系、数学系、生物学系の書店ならここというほど、有名な明倫館です。巷では滅多に手に入らない、プログラミングの書籍も充実しており、そのほか初心者でも楽しめる雑誌や入門書も取り揃えています。UIが優れておりこちらのサイトも必見。
鳥海書房
こちらも有名な古本屋です。名前の通り、鳥や海洋生物、そのほかの動植物を広く取り扱うニッチな古本屋です。「昆虫」や「植物」は幾つになっても男のロマンを誘いますが、知的好奇心の赴くままに立ち読みしていると時間があっという間に過ぎていきます。
矢口書店
映画・演劇・シナリオ・戯曲ならこの書店です。映画にまつわる貴重な古書のほか、ポスターなんかも手に入ります。現在でも有名な俳優や監督が、卵時代にここに通っていたそうです。
書泉グランデ
出典:https://4travel.jp/dm_shisetsu/11290564
書泉の旗艦店。こちらは1F~7Fまである大きな書店ですが、専門的な書物を取り扱うことで知られ、隣にある三省堂書店似ない書店を扱うなどしていました。特に鉄道関連の書籍の品揃えでも有名です。
かんけ書房
神保町に数ある漫画・コミック専門店のうち、少年少女漫画から海外漫画、レトロな漫画まで幅広く手に入るのがこの書店です。
小川図書
こちら洋古書専門店で、内装が美術館のようになっています。来店には事前の予約が必要ですが、洋古書だけでなく漢文なども置いてあります。
北沢書店
こちらも洋書専門店で、12000冊の洋書が並んでいます。ハリポタを思わせる内装ですが、比較的広いため一見さんでも全然入りやすいでしょう。
崇文荘書店
名前には似つかずこちらも洋書専門店です。上記に挙げた二つもそうなのですが、研究者の利用が多く、また店主が海外に出向いて洋古書を収集しているそうです。
他にも猫専門店のお店や、ミリタリー、近年話題の韓国などさまざまな専門に特化している書店があり、ここで紹介しているのはほんの一部です。(正確な数は定かではないのですが、少なくとも200、多くて400あるとも言われています)。ぜひ訪れる際は、BOOK じんぼう で探してみるといいでしょう。中には予約必須の店もありますが、どの店も入ってしまえば敷居は低いものです。
おすすめの喫茶
先ほども述べたように、こうした書店の集中と、それに伴う集客の結果、「読書」の場を提供すべく戦前より喫茶というのもこの辺りで開業が相次ぎました。東京堂書店や三省堂書店など、カフェが併設されることも多いですが、多くの純喫茶がこの辺りには残っています。文豪ゆかりの喫茶もあれば、今なお多くの作家をお忍びで惹きつけてはやまない場所もあるそうなので、もしかしたら作家に出会えるかもしれません。
山の上ホテル
こちらは、神保町からお茶の水の方へ少し丘を登ったところにあるホテルです。別名「文化人のホテル」とも呼ばれ、川端康成、三島由紀夫、池波正太郎、伊集院静らの作家が定宿としていました。また三島由紀夫は、このホテルについて「東京の真中にかういふ静かな宿があるとは思はなかつた。設備も清潔を極め、サービスもまだ少し素人つぽい処が実にいい。ねがはくは、ここが有名になりすぎたり、はやりすぎたりしませんやうに」と述べています。
また作家の奔放な女性関係の舞台になったのがこのホテルとも言われています笑。(檀一雄の『火宅の人』にもその様が描かれている)
出典:https://jbpress.ismedia.jp/articles/-/63296
自分自身グルメではないので喫茶に関しての解説はほかサイトにこれは譲りますが、この辺りに通う人はたいてい書店で本を買って、喫茶店で読みながら一休みするというのが定番コースのようです。
まとめ:
日本のみならず世界から読書好きを引き寄せては止まない神保町。東京にこういう世界最大規模の書店街と喫茶店街があることは幸せなことでもあります。一見、外から眺めてみる分には、そこまで街が広がっているような印象を受けませんが、裏路地などは入り組んでおり、目的もなく歩いてるだけで「こんなところにこんな書店あったの?」という発見があります。
ぜひ皆さんも神保町に訪れて、お気に入りの本を探してみてください。