もしディズニーの名曲の数々が生まれなかったら、今のディズニーはどんな世界観だったでしょう?
ディズニーが他の映画アニメーションスタジオと違うところ、それは最も早く音楽の重要性に気づいたことです。最初の「蒸気船ウィリー」でトーキーという音と映像を組みあわせる試みにはじまり、シリーシンフォニー、ファンタジアと、ディズニーは映像と音楽の関係性を貪欲に追求してきました。
特にディズニールネッサンス。美女と野獣やノートルダムの鐘、リトルマーメイド、ポカホンタス、ヘラクレスなど、次々にヒット作を打ち出したこのディズニールネッサンスと呼ばれる時代には、たった一人の作曲家が非常に大きな役割を果たしました。そこで今回は、生きる天才であり、そして大作曲家のアランメンケンの珠玉の名作を、彼の人生とともにまとめて追っていきたいと思います。
本人演奏によるディズニーメドレー
ディズニーに入る前
ユダヤ人として、ニューヨークマンハッタンに生まれたアランメンケンは幼少期より音楽に興味を持ち始めます。親からは医学部進学を勧められますが、本人の意向でニューヨーク大学を音楽の学士を卒業すると、最初のキャリアとしてはまずミュージカルの世界で音楽を作曲し始めます。
30歳になった頃より徐々に、作曲した曲が評価され始めるようになり、中でも『リトル・ショップ・オブ・ホラーズ』というB級ホラー映画のミュージカル版は非常に高く評価されます。この作品にて、彼は脚本家兼作詞家のハワードアシュマンとともにアカデミー賞にノミネートされ、業界から注目されたことを受け、ディズニーからスカウトを受けます。
Little Shop of Horrors
ディズニー映画ではないものの、彼は『リトル・ショップ・オブ・ホラーズ』の曲をディズニーメドレーと合わせて弾くことも多い。
ディズニールネサンスの名曲一覧
リトルマーメイド
Part of Your World
1980年代のディズニーはヒット作に恵まれず、他社から買収を画策されるなど、かなり会社が弱体化していた頃でした。そんな中、ハワードアシュマンと一緒にディズニーに入社した彼らは、まずアンデルセンの名作『人魚姫』のミュージカル化に取り掛かります。この作品は、彼らに取っては最初の作品であったのにも関わらず、大ヒットを巻き起こし、さらにアランメンケンは『アンダー・ザ・シー』でアカデミー賞を受賞します。
Under the Sea
美女と野獣
Beauty and the Beast
次に彼ら2人は、すでに製作の進んでいた『美女と野獣』に参加します。アシュマンはドラマチックな方向性で進んでいた本作の製作を、リトルマーメイドと同じミュージカル路線へと切り替えるように指示します。また彼は、再びアランメンケンに全ての楽曲の制作を依頼しますが、残念ながらアシュマンはエイズによって作品の公開を待たずに病死してしまいます。
Be Our Guest
1991年に公開された本作は、アカデミー作品賞にアニメーションとして初めてノミネートされ、アカデミー歌曲賞に至っては5作品のうち3作品が『美女と野獣」からという前代未聞の高い評価を受けました。
アラジン
A whole New World
上記2作品の立て続けの成功により、勢いに乗ったディズニーは今度は中東を舞台にするという挑戦に乗り出します。同じくアランメンケンは作曲を一手に背負い、『ホールニューワールド』で2年連続のアカデミー歌曲賞を受賞します。
One Jump Ahead
ニュージーズ
Carrying the Banner
こちらは実際にニューヨークで起きたストライキを元にした映画です。映画公開時には高い評価を受けませんでしたが、ビデオ化されるとカルト的人気を誇り、20年もの時を経てブロードウェイへと回帰します。この作品の楽曲も彼が一手に引き受けており、ストーリー以上に曲が有名であるため、耳にしたことがある人も多いでしょう。アランメンケンはこれでトニー賞も受賞しています。(上記の作品は再リメイク版)
ポカホンタス
Color of the Wind
今度はインディアンを主人公に据えるという挑戦に乗り出したディズニー。本作は色々批判がありながらも、依然として楽曲は高い評価を受け、アランメンケンは4つ目のアカデミー賞歌曲賞を受賞します。
ノートルダムの鐘
Someday
原作にあるHunchbackの直訳「せむし」が放送コードに引っ掛かるため『ノートルダムの鐘』と呼ばれてる本作。マイナーとは言われがちですが、制作スタッフも『美女と野獣』のメンバーが集まり、近年になって再びミュージカル化されるなど高い評価を受けています。アランメンケンは大聖堂の鐘をテーマにした本作と世界観を合わせるために、教会音楽を存分に取り入れました。(アカデミー作曲賞ノミネート)
ヘラクレス
Go to The Distance
こちらも若干マイナーでありながら、『アラジン』のスタッフが再結集して作られた、軽いタッチでコメディ風のミュージカル映画です。本作でもまた彼はアカデミー作曲賞にノミネートされますが、ここで彼はテーマになっているギリシャ神話との相乗効果を狙ってゴスペルを楽曲に取り入れます。
ミュージカルに回帰
美女と野獣やリトルマーメイドのミュージカル化に伴い、彼は映画作曲から徐々に軸足をミュージカルの方へ移していき、これまで自らが作曲した作品のリライトに挑戦します。
天使にラブソングを(ミュージカル版)
そのほか「天使にラブソングを」のミュージカル化や「ブロンクス物語」、「クリスマスキャロル」など新しいミュージカルの作曲なども引き受けます。
魔法にかけられて
That's How You Know
ミュージカルの楽曲制作を手がける傍らで、ディズニーアニメーションの楽曲制作も引き受け、「魔法にかけられて」では再びアカデミー賞へノミネートされます。歌曲賞では5作品のうち3作品がこの作品と、彼の全く衰えない天才的な歌曲能力が光ります。
シンドバッドストーリーブックヴォヤッジ
コンパスオブユアハート
こちらは東京ディズニーシーにあるアトラクション。Dオタからは非常に根強い人気を集めるアトラクションですが、その理由の一つにこの『コンパスオブユアハート』があります。
塔の上のラプンチェル
I see the Light
久々のアニメーション復帰作はこちらの作品で、誰でも聞いたことある「輝く未来(I see the Light)」はアカデミー賞にノミネートされています。
まとめ:
70歳を超えたということもあり、近年では新曲の発表ペースは若干落ちていますが、それでもシュガーラッシュオンラインの作曲をしたりと彼の作曲能力は全然衰えていません。40年ものキャリアで膨大な数の作品を世に打ち出し、8回のアカデミー賞と11回のグラミー賞を受賞してきましたが、これからの活躍にも期待です。
出典:
アランメンケンの英語版Wikipediaより(https://en.wikipedia.org/wiki/Alan_Menken)